
産休・育休をあたりまえのものに。働くママ・パパのホンネ
育休って、誰のためのものなのでしょうか。本来は子どものため、家族のためのはず。でも、いざその立場になってみると、頭をよぎるのは仕事のことばかり。
「どうやって上司に切り出そう」
「復帰した時に居場所はあるかな」
「時短勤務で迷惑をかけないかな」
子どもとの時間を大切にしたいと思う一方で、働くことへの不安や心配が次々と浮かんでくる。そんな複雑な気持ちを抱えている人も多いのではないでしょうか。
あちこちで聞く育休という言葉。でも、実際にどんな経験や想いがあるのかは当事者にしかわかりません。今回の未来をつなぐ交差点では、そんな育休の「リアル」を経験したグループの仲間たちが本音で語り合いました。
今回交差点で出会った方々はこちら

八尋さん
セブン‐イレブン・ジャパン 福岡地区事務所 会計担当
2022年9月〜2025年5月 産休・育休取得

江口さん
セブン‐イレブン・ジャパン 西東京ゾーン 世田谷北地区 OFC(オペレーション・フィールド・カウンセラー)
2024年10月〜2025年2月 育休取得
※OFCは、セブン‐イレブンの加盟店舗のオーナー様へ経営カウンセリングを行っています。

花田さん
セブン&アイ・ネットメディア システム企画本部 ITソリューション部
2019年12月~2021年3月、2023年10月〜2025年4月 産休・育休取得

大嶋さん
セブン‐イレブン・ジャパン 地区MD統括部(沖縄)
2023年9月〜2023年11月 育休取得
「産休・育休を取ろう!」決意した時の気持ち
――命を授かった時、女性に必要なのは体をいたわる時間です。でも、いざ産休を取るとなると「本当に大丈夫かな?」と不安になることもありますよね。その不安は育休も同じ。仕事との兼ね合いでなかなか言い出せない人も少なくないのではないでしょうか。
皆さんはどんな気持ちで産休・育休を取得したのですか?

大嶋さん
すごく不安でしたね…! ちょうど、OFCから沖縄地区の商品部への転勤のタイミングと重なって、研修期間中に育休に入ることになったんです。復帰後、同僚たちのフォローがなければ大変なことになっていたと思います。

八尋さん
私は10年以上働いてきてこれほど長く休むのは初めてだったので、初めは不安でいっぱいでした。ただ、周りの人たちに恵まれて、本当に心強かったです。
現在所属している福岡地区事務所は、社員の9割が女性で、その半数以上がママさん。だから、いざという時のフォロー体制はもちろん、産休・育休や子育ての悩みも相談しやすい環境だったんです。

初めての産休・育休を経験した八尋さん。

江口さん
職場環境は大切ですよね。私の場合、周囲に育休を取ったことのある人がいませんでした。だから、育休前は制度として知っていても、少しためらいがあったんです。決め手は妻の「最低3カ月は一緒にいてほしい」という言葉でした。

大嶋さん
前例がないと、申請するのは勇気がいりますよね。

江口さん
それが、当時の上長がとても理解のある方で。現場への負荷を最小限に抑える形で引き継ぎできるように、取り計らってくださったんです。それだけではなく、復帰のタイミングで新しい地区を担当できるように調整していただきました。おかげで不安なく育休に入ることができて、感謝しかありません。

安心して育休も職場復帰もできたという江口さん。

花田さん
女性の場合は産休から自然な流れで育児休業へ移行することが多いため、私自身も特別な決断をしたという感覚はあまりありませんでした。
もちろん、職場復帰に対する焦りや不安はありましたが、育児休業は子どもとじっくり向き合える貴重な時間です。ですので、この期間をかけがえのないものとして過ごすことが大切だと思ってます。

気負いなく育休に入ったという花田さん。

大嶋さん
子どもと向き合う時間、大切ですよね…。私には子どもが4人いるのですが、初めて育休を取ったのは一番下の子が生まれた時でした。それまでは、妻がほぼワンオペで子どもたちを育ててくれたんです。妻にも子どもたちにも、申し訳なかったなと思っています。

第4子で初めて育休を取得した大嶋さん。
つらいことも楽しいことも。子育てのリアル
――花田さんが話してくれたように、育休は生まれたばかりの子どもと過ごせる貴重な時間ですよね。皆さんはどんなふうに過ごされましたか?

八尋さん
子どもの成長ってすごく早くて、昨日までできなかったハイハイがいきなりできるようになったり、笑顔を見せてくれたりするんですよね。最初の3カ月は夜中の授乳で眠れませんでしたし、子ども中心で仕事のこともすっかり忘れるくらい忙しかったのに、そんな日々の変化に触れるたび、疲れがどこかへ消えるんですよね(笑)。

八尋さん家族。旦那さんも育休を取り、二人三脚での子育てをしていたそう。

江口さん
うちも同じです。とにかく寝不足になるんですが、子どもの成長を感じたり、笑顔に癒されたりすると、温かい気持ちが広がっていくんです。でも、本当に二人がかりでやっとなんですよね。復帰後は平日になかなか時間が取れない分、少しでも妻の負担を減らせるように率先して家事をするようになりました。

江口さん家族。奥様の「最低3カ月は一緒にいてほしい」という言葉が育休取得の決め手になったそう。

大嶋さん
今回育休を取ってみて、こんなにやることがあるのかと痛感しましたね。授乳後の寝かしつけや、朝昼晩の食事づくりから掃除洗濯、上の子の学校の対応まで。妻は今までこれを一人でやっていたのかと、リスペクトしかないです。
それからお二人が言ったように、なんといっても子どもの笑顔が最高ですよね。子育ての喜びを改めて経験できていると思います。


花田さん
私には現在2人の子どもがいますが、第1子が産まれた年はコロナ禍の真っ只中でした。人との関わりが限られている状況下ではありましたが、母や姉からアドバイスをもらいながら、なんとか育児を進めることができました。
個人的につらかったのは、コロナ禍ということもあり外出の機会がほとんどなく、家族以外の方々と交流することができなかった点です。

産休・育休からの復帰。仕事やチームはどう変わった?
――育休の時間は、それぞれに大変さがありながらも、かけがえのないものだったと思います。ただ、そんな毎日にも区切りはあって、皆さんは仕事に戻られています。実際に職場に復帰してみて、いかがでしたか?

江口さん
業務の変化はそれほどなく、復帰自体はスムーズでした。ただ、これからは子どもを保育園に預けようと考えているので、家庭内の役割分担や急な発熱時の対応など、仕事と育児の両立に不安があります。
今担当している地区には、ほかにも子育て中の同僚が何人かいるので、どうやって乗り越えているのか情報収集をしているところです。


花田さん
子どもが小さいと、急に休むことも多くなるんですよね。私の所属するチームでは、「一人で抱え込まない」という方針のもと、業務が円滑に進むようみんなで日々調整しています。私自身も日頃から進捗状況をこまめに共有し、なるべく業務に支障が出ないよう努めています。
これはチームだけの取り組みにとどまらず、コロナ禍という「いつ、誰が抜けてもおかしくない」状況を背景に、職場全体で“組織で仕事をする”文化が根付いてきているのではないかと思っています。


八尋さん
福岡地区事務所も、職場全体で育児をサポートする雰囲気があります。おかげで、大きな不安はなく子育てと仕事が両立できているんじゃないかなと思っています。苦労したのは、育休中に始まったインボイス制度や、新しく導入されたシステムへの対応でしたね。新しく覚えることばかりでした。

大嶋さん
私は皆さんとは少し状況が違っていて、沖縄に赴任して早々の育休だったので、職場の同僚のこともよく知らないですし、業務もあまり把握できていなかったんですよね。正直、ちょっとブルーな気持ちでした。
でも復帰した初日に、部署の皆さんがカフェでランチ会を開いてくれて。私が職場にすぐになじめるように寄り添ってくれたんだなと感じました。その時に食べたチョコバナナパンケーキの味は、一生忘れられません。

八尋さん
職場の温かさで救われる部分って大きいですよね! うちの先輩ママさんたちも、「お互い様だから気にしないで」といつもフォローしてくれます。
見える世界が変わった。産休・育休後の気づき
――ありがとうございます。それぞれ状況は違いながらも、相談相手やサポートしてくれる方がいるという点では共通していますよね。最後に、育休を経験して職場に復帰したからこそ見つけられた気づきがあれば教えてください。

江口さん
OFCの仕事は、店舗やオーナー様と密接に関わるので自分一人で抱え込みがちなんです。「自分がいないと地区の皆さんに負担をかけてしまう」とすら思っていたこともあります。だから、復帰する時は「抜けて申し訳ない」という後ろめたさも少しありました。
でも、育休以前に担当していた地区の方々から「おかえりなさい」と言われて、「あぁ、自分一人で抱え込まなくてもよかったんだ」と気づかされました。こうやって、誰かが自分を支えてくれているから仕事ができるんだと。それからは周りに頼れるようになりました。

花田さん
江口さんは、いい意味で肩の力が抜けたのかもしれないですね。私は時間の使い方を意識するようになりました。時短勤務の中で効率的に進めるために無駄を省いたり、AIを活用したり。チームのみんなへの感謝も強くなりましたね。
私自身がこれまでに助けてもらったように、今度は私がチームのみんなを支える番だと思っています。

八尋さん
私も仕事の仕方が変わりました。仕事はできるだけ前倒しで進めますし、急に呼び出しがあっても引き継げるよう、誰が見ても進捗がわかる工夫をしています。ちなみに今第2子を妊娠中なのですが、体に負担がかからないように常にサポートしてくれるので、本当にありがたい環境だと日々感じています。
これから産休や育休に入る方には、不安もあると思いますが、まずは自分の体を大事にして、今しかない時間を大事にしてほしいです。


大嶋さん
私が気づいたのは「育休は自分の生き方を考える選択でもある」ということでした。実は今回も育休を迷っていたのですが、妻から「育休を取らなくてもいいけど、一緒にいてくれたらうれしい」と言われた時にハッとしたんです。仕事が優先で、自分がどうしたいかを考えられていなかったって。
育休は“誰かのため”だけじゃなくて、“自分がどう生きたいか”を考えて選ぶものでもあるんだと、今回学びました。
ただ…実際に入ってみると想像以上にハードで、休業というより“育児フル稼働”でしたね。育休という名前は変えるべきだと思います!(笑)。

育児フル稼働中の大嶋さん。

江口さん
わかります。私は制度を知っていたので育休を取れましたが、知らなかったらと思うと…あまり想像したくありませんね。

八尋さん
だからこそ、制度や環境がもっと整って、誰もが取りやすくなるといいなと思います。

花田さん
「育児休業から復帰すると浦島太郎のような気持ちになる」とよく耳にします。特に女性の場合は育児休業が長期に及ぶことも多く、「自分は本当に社会に必要とされているのだろうか」といった不安を感じることが多いようです。
休業中も会社とゆるやかに繋がることができる仕組みや、育児休業を経験した方同士が気軽に相談できる場があると、安心ですよね。

大嶋さん
国のサポートも必要だと思います。仕事内容や立場に関係なく、誰もが希望するだけ育休を取得できる環境が整えば、社会全体がさらに働きやすく、良い方向に進むのではないかと思います。
育休での経験は人それぞれ。でも、その時間に得た思いや気づきは、きっとこれからの働き方や生き方につながっていくはず。そう思える対談でした。

アンケートフォーム