
“未来のコンビニ”をつくるためには? 大阪万博のリアル 大阪万博編【前編】
万博という言葉を聞いた時、どんなことを思い浮かべますか?
自分とは関係のない遠い世界のこと。あるいは、未来を夢見るための場所。そんなふうに感じている方もいるかもしれません。
でも、電話も、テレビも、エレベーターも。「今では当たり前」になった技術は、万博がきっかけとなり社会に広く普及しました。万博は決して遠い未来を夢見るだけの場所ではなく、少し先の未来を体験する場所でもあるのです。
では、今や私たちの生活に欠かせないものとなったコンビニエンスストアの“少し先の未来”は、どんなものになっていくのでしょうか。
大阪・関西万博では、2030年をイメージした「未来型店舗」が2店舗登場。お店のつくり方から新しいサービス、環境への配慮まで。これまでにないチャレンジが詰まった、未来のコンビニです。
今回の交差点に集まったのは、そんな“未来のコンビニ”に関わる皆さんです。
今回の交差点で出会った方々はこちら

左:新(あたらし)さん/マーケティング本部
大阪・関西万博プロジェクト担当。西ゲート店の統括責任者として店舗運営に携わる。
右:永田さん/2023年入社
2025年春に西ゲート店 店長に着任。

左:島さん/マーケティング本部
大阪・関西万博プロジェクト担当。ウォータープラザ店の統括責任者として店舗運営に携わる。
右:多喜(たき)さん/2023年入社
2025年春にウォータープラザ店 店長に着任。

左:足立さん/マーケティング本部
大阪・関西万博プロジェクト担当。大阪ヘルスケアパビリオンでのブース運営、店舗運営フォローを担当。
右:山﨑さん/マーケティング本部
大阪・関西万博プロジェクト担当。運営・事務局として万博参画に関する全般業務を担当。
まさか自分が万博に!? 立場も経験もさまざまなメンバーたち
―この大阪万博の店舗は、いつものセブン‐イレブンとは違った雰囲気がありますよね。大阪万博のプロジェクトは2023年からですが、当時は皆さん別々の部署にいらっしゃったのだとか。


島さん
セブン‐イレブンは大阪万博に2店舗出店していて、私はウォータープラザ店で店舗全体の運営・統括にあたっています。もともとは、駅構内の店舗を担当していて、大阪駅や京都駅などで、現場の運営サポートをしていたんですよ。まさか自分が万博関連の仕事をするとは、夢にも思っていませんでした(笑)。

足立さん
それは私もですよ。プロジェクト開始時から参加していますが、「万博とはなんぞや!」というところからのスタートでした(笑)。不安がありつつも、ワクワクしていたのを覚えています。

多喜さん
僕は2023年入社なのですが、最初から「2030年の未来型店舗」を誰よりも早く体験したいと思っていました(笑)! その気持ちを当時の上司に伝えて、ウォータープラザ店の店長に着任しました。店舗統括の島さんとも日々相談を重ねながら、お客様に未来の店舗の魅力を届けられるように試行錯誤しています。

山﨑さん
私はその「2030年の未来型店舗」をつくるために、プロジェクトの比較的初期から参加しています。これまでの京都や兵庫でのオペレーション・フィールド・カウンセラー(OFC:店舗経営相談員)や本部業務の経験をしてきて、訪日外国人の方のニーズもある程度理解しているつもりです。その知見を活かすことができたらうれしいですね。

新さん
私は地元・関西で新たな挑戦ができるし、今までとは違った仕事もやってみたいと上長に相談していたので、まさに願ったりかなったりでした(笑)。私は西ゲート店の店舗運営をしていて、多喜さんと同じく2023年入社の永田さんと一緒に働いています。

永田さん
私も大阪出身で、ずっと育ってきた土地でこうしたチャンスをいただけたことが本当にありがたいです。ただ、店長業務は始めてですし、店舗応援に来てくださるのはベテランの方ばかりなので、少し戸惑いもあります…(笑)。でも、毎日が新鮮です!
未来を支えるのは、地道な積み重ね――万博店舗のリアル
―出発点こそバラバラでしたが、いまや皆さん、ひとつのチームとして“未来の店舗”を支えていらっしゃるんですね。実際に営業が始まってみて、通常の店舗とは異なる点も多かったのではないでしょうか?


多喜さん
万博会場内の2店舗にはアルバイトやパートの従業員さんがいません。そのかわり、万博期間中約600名の本部スタッフやOFCの方々が応援として運営に関わってくださっています。ただ…先ほど永田さんが言ったように、年齢も社歴も先輩ばかりの中で、自分が店長としてチームをまとめ、方向性を示す立場になるのはとても緊張しました。

島さん
万博の店舗ならではですね。通常の店舗とは違うなかで、入社2年目の二人がよくやってくれていると思います。

多喜さん・永田さん
ありがとうございます!

島さん
お店に並べる商品を手配するだけでも、普段とはまったく違うんですよ。会場に配送車両を入れるには毎回申請が必要ですし、万博ではモバイルバッテリーや酒類などの免許品等取り扱えない商品もあります。万博協会が定めるルールの中で、どう店舗を運営していくのかに、だいぶ頭を悩ませましたよね。

足立さん
いろいろ課題がありましたね(笑)。たとえば割りばし一つとっても、国産の環境配慮型素材を使っています。実はこれ、万博のために特別に用意したものなんですよ。通常の店舗ではコストの兼ね合いで採用が難しいのですが、その分、ここでしかできない体験を届けたいという思いが込められています。
大きなものから小さなものまで課題はいろいろありますが、その分やりがいを感じますね。

山﨑さん
環境への取り組みでは、本当に幾つもの挑戦をしています。私たちが着ているこの万博用のユニフォームは、元々セブン‐イレブンの緑の制服なんですよ。古くなった制服とペットボトルを使用して、ユニフォームをつくっているんです。

新さん
未来的なことと、実務のせめぎあいもあるんですよね。万博会場の2店舗では、従来のように揚げ物などのファストフードをレジ横に並べるのではなく、デジタルサイネージを見て注文していただくスタイルを採用しています。


新さん
その場でオーダーを受けてから調理するため、レジ周りはすっきりし、なによりでき立ての“おいしい商品”をお客様にお届けすることができるんです。なるべくお客様をお待たせしないように、店舗メンバーが日々、調理の段取りを考えてくれています。
あの頃の“未来”と、今ここにあるリアル
―華やかな面だけに目がいきがちな万博ですが、その裏には皆さんの努力や工夫があるんですね。そんな“未来のコンビニ”の現場に携わってきた皆さんに、一つお聞きしたいことがあります。
子どもの頃に思い描いていた“未来”と、今、目の前にあるこの風景はどんなふうに違っていて、どんなふうに重なっていますか?


新さん
先ほどのデジタルサイネージの話もそうですが、商品づくりや店舗づくり、そしてその売り方まで大きく変わってきていると感じます。こんな未来は想像したこともなかったので、万博に参加して“リアル”に実感できるようになったのは貴重な経験ですね。
ちなみに、子どもの頃に夢見ていた未来は、大好きだった漫画みたいに、乗り物を使わずに自分も空を飛ぶことでした(笑)。

多喜さん
僕の場合は、小さい頃から携帯電話があったので、音とか映像だけではなくて、瞬間移動ができるようになると思っていました。まだ、できないみたいです(笑)。

永田さん
宇宙旅行も現実になりつつあるから、もしかしたら…そんな日が来るかもしれませんね! 子どもの頃は、近所に新しいコンビニがオープンするたびに、どんなお店なんだろうってワクワクしていました。
今でも、紅茶やスムージーなど新しい商品が出るたびに同じ気持ちになります。子どもの頃の私に、未来のコンビニはこうなっているんだよって教えてあげたいですね。

島さん
子どもの頃はあまり覚えていないのですが、私が入社したのは21年前なんですよ。その頃は紙を使うことが多くて、プライスカードもそうだったんですよね。
それが今回、万博の店舗ではプライスカードがすべてデジタルになっていて、時代の変化を感じます。細かいところまでいろいろな工夫がされているので、お客様にも楽しんでほしいですね。

山﨑さん
これまで、商品は売場に出すもの。売るためには陳列を変えればいいと考えてきました。この未来型店舗で衝撃だったのが、デジタルサイネージのファストフード商品が次々と売れていくことです。
万博という立地もあるかもしれませんが、通常店舗に比べて、ファストフードの販売数が大きく伸びています。売り方はまだまだ変えられる。そんな気づきがありました。

足立さん
技術は確実に進歩していますよね。でも今は、どんなに便利なものでも「人にも地球にもやさしいかどうか」を考えないといけない時代になりました。子どもの頃は考えもしませんでしたが、この“今”に対応していかないといけないですよね。
―2030年のセブン‐イレブン。その輪郭が、今回の万博で少しずつ浮かび上がってきました。一方で、環境への取り組みのように、すぐには形にならない課題も残されています。
後編では、接客やフランチャイズの視点から、“未来のコンビニ”の新しいあり方を探っていきます。

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