
米粒一つひとつに技術と想いを込めて。セブン‐イレブンのおにぎりの“芯”をつくる炊飯マイスター
おにぎりは日本人にとって、なじみのある食べものの一つ。朝ごはんにお昼ごはん、夜ごはんとして食べることもあります。
でも、そんなふうにいつでも気軽におにぎりを食べるようになったのは、いつからなのでしょうか。
もしかしたらそれは、コンビニでいつでも気軽におにぎりを買えるようになった時からなのかもしれません。
今回のあすを紡ぐたびでは、セブン‐イレブンのおにぎりのおいしさを支える“お米”、その炊き上がりにこだわりぬく炊飯マイスターを訪ねました。
五感で炊く。炊飯マイスターが守る、おにぎりの味
「セブン‐イレブンでおにぎりを発売したのは1978年だったのですが、それまでは“家庭でつくる”ことが当たり前でした。ですから当時は、売れるわけがないという声も少なからずあったようです」
そう話すのは、セブン‐イレブン・ジャパン 商品本部 米飯・麺類部の池田さん。

池田さん
実際に販売当初は苦戦したようですが、ご家庭のおにぎりとは違うパリパリとした海苔の食感とお米のおいしさで、徐々に広がっていきました。それから今に至るまで、わらべやさんをはじめとするデイリーメーカー様と協力しながら、新しいおにぎりを開発し続けています。
そんなセブン‐イレブンのおにぎりの炊飯の質をさらに高めようと2015年から始まったのが、炊飯マイスター制度です。デイリーメーカーの各工場で実務経験を積み、厳しい試験をくぐり抜けた炊飯のプロが、マイスターとして米の炊き上がりを厳しく管理しています。
現在東京エリアで活躍する炊飯マイスターの一人が、わらべや日洋食品株式会社 東京工場の髙島さん。

髙島さん
子どもの頃からセブン‐イレブンが大好きで、特に『とり五目おむすび』は家族で出かける時はいつも買ってもらっていました。今でもナンバーワンの味です(笑)。だからというわけでもないのですが、わらべやに入社してからはとことん炊飯のことを勉強していました。

池田さん
髙島さんとは炊飯マイスター任命の際にお会いしましたが、そこまでおにぎりが好きだったとは知りませんでした。うれしいですね。

髙島さん
わらべやに入社した際、炊飯の部署への配属を希望していました(笑)。だから炊飯マイスターの試験を受けたのは、私にとっては自然なことだったんですよね。


池田さん
心強いですね。炊飯マイスターは本当に狭き門で、私たちの目標は各工場に炊飯マイスターを2名以上選任することなのですが、目標にはまだ達していません。炊飯は奥が深く、天候で炊き上がりが左右されますし、米の産地や保管状態で味も変わります。炊飯マイスターに求められるのは、どんな環境にあっても味を安定させられる知識と経験なんです。

髙島さん
炊飯には五感をフル活用しますが、中でも実際に食べてみて、舌で味や食感の良し悪しを見極める“ベロメーター”が重要ですね。
炊きたてではなく、食べた時のおいしさを一番に
髙島さんたちが目指す理想の炊き具合は、“粒立ちが良く、ほど良い粘りがある”もの。言葉にするとシンプルに感じますが、気温や湿度などさまざまな要素が絡み合ってきます。工場から店舗に運ばれるまでの時間も、その一つ。

手触りと目視で米の炊き具合をチェックする髙島さん。

髙島さん
工場で炊飯してから店頭に並ぶまでの間に、ご飯の状態は刻一刻と変わっていきます。賞味期限まで一定の品質を保ち、おいしく食べていただけるように、あえて水分量を多めにして炊き上げています。

池田さん
時間の経過を見越して、少し柔らかめに炊いているということですよね。炊飯マイスターの皆さんには各工場の品質管理もお願いしていますが、髙島さんのようなベロメーターでのチェックは難しいと思います。繊細な調整はどのように行っているんですか?


髙島さん
そこがまさにこの仕事のやりがいであり、難しさなんですよ。たとえば私が以前に勤務していた横浜工場はIHの炊飯器を使っていましたが、この東京工場ではガスの直火炊きです。熱の強さも加熱速度も違うので、設備の特性を完全に把握する必要があります。設備に合わせて火加減や操作を最適化していくということですね。

池田さん
髙島さんたちのご苦労は察していましたが、こうして聞くとまさにマイスター、職人の技ですよね。
環境が変わっても、おいしい一口を届けるために
セブン‐イレブンがおにぎりを開発してから約50年。炊飯マイスター制度の誕生によって、おにぎりの品質は年々向上しています。
一方で、この50年間で状況は大きく変わりました。天候や原料の価格が、“これまで通り”にはいかなくなった中、セブン‐イレブンと炊飯マイスターも“これまで通り”を少しずつ変えています。


髙島さん
週間天気予報をチェックするのは以前からやっていましたが、今年の夏は記録的な暑さもあり、例年以上に意識するようになりました。それ自体は昨年のデータを参考にしながら炊飯条件を調整すれば済む話なのですが、別の問題があって…。

池田さん
猛暑が続くと収穫量が減り、米の質にも影響しますよね。

髙島さん
そうなんです。ここのところ、毎年収穫状況や品質が変動するので、毎回何度も炊飯テストをしています。この米は粒立ちが出やすいな、この米は粘りが強めに出るから最後に火力の調整が必要だなと、その年のお米に合わせた調整をしているんです。


池田さん
このように最終的なおいしさは炊飯マイスターの皆さんに担保していただけていますが、年々頭を悩ませるのが価格の部分です。しかも、値段が高騰しているのはお米だけではなく、海苔も同様。
そこで、海苔を巻かなくてもおいしい商品をつくれないかと考えた商品の一つが、だしで炊いた『一番だしおむすび』でした。花かつおと真昆布からとれた一番 だしを使って炊き上げ、だしの旨味を最大限生かしています。

髙島さん
『一番だしおむすび』は印象深かったですね!

池田さん
1日3回、1時間かけてだしを抽出しているんですよ。一度にまとめてだしを取るほうが効率的なのですが、少しでもだしの旨味を逃さないよう、このつくり方を続けていただいています。

髙島さん
個人的には韓国フェアのキンパやビビンバおにぎりの反響もうれしかったです。発売してからすぐに追加の製造依頼が来て、“売れたんだな”ってうれしくなりました。

池田さん
韓国フェアは若い方からも高い支持をいただけたんですよ。最近、若者離れが課題の一つだったので、手ごたえを感じられてよかったです。定番商品の磨き込みだけではなく、今後もおにぎりを楽しんでいただくための新しい挑戦を続けるので、期待していただきたいです。

おむすびの上部と中具の2カ所に具材をたっぷりと盛り付けた、『旨さ相盛おむすび 紅しゃけとすじこ 』。
誰かの思い出になる、おにぎりを
おにぎりの未来を描く池田さんと、日々のおいしさを守る髙島さん。最後に、そんなお二人がセブン‐イレブンのおにぎりに込める想いをお聞きしました。

髙島さん
新商品を考えるのは池田さんを始めとしたセブン‐イレブンの方々なのですが、“最初の一口”は私がつくっていると思っています。だから、シンプルにうれしいです。でも同時に、そのおいしさの安全・安心を守る責任も感じています。

池田さん
おにぎりはセブン‐イレブンの象徴ともいえる大切な存在で、私も大きな使命感を感じています。セブン‐イレブンでは常時20~30種類のおにぎりを販売していますが、食べたい味がなければ手に取っていただけません。だから、どんなお客様にとっても食べたいおにぎりがある状態を常に維持したいんです。
そのために、今後も炊飯マイスターの皆さんの力をお貸しいただきたいと考えています。


髙島さん
もちろんです! 私が大好きな『とり五目おむすび』のように、子どもの頃に好きになった味って、大人になっても覚えているんですよね。そんな、誰かの思い出の味になるようなおにぎりをこれからも一緒につくらせていただきたいです。
変わらないおいしさを支える工夫と想いを、ぎゅっと込めて。
これからのおにぎりは、もっと豊かなものになっていきます。

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