
まるでマンゴーを冷凍したアイス!?「まるでシリーズ」12年間の軌跡
「これ、まるでマンゴーを冷凍したような食感じゃないですか!」
2013年、あるアイスバーの試作品を前に、商品開発を担当して間もない女性が思わず口にしたひと言。これが、果肉そのものの食感を実現したアイスバー、「まるでシリーズ」誕生のきっかけでした。
果物のおいしさをそのままに、冷たいアイスとして楽しみたい。そんなちょっぴり贅沢な願いを叶えてくれる「まるでシリーズ」は、第1弾の『まるでマンゴーを冷凍したような食感のアイスバー』を皮切りに、たちまち多くの人の心をつかみました。
商品開発にまつわるさまざまな雨と、その晴れ間をひも解くアメノチハレ。今回は、累計1億9,500万本(2024年4月時点)へと成長した、「まるでシリーズ」の誕生から現在にいたるまでの12年間の歩みをお届けします。
まるで本物! 食感へのこだわりから生まれたアイスバー
「どこにもない新しいアイスバーを目指す中で、キーワードになったのが“食感”でした」

そう語ったのは「まるでシリーズ」の生みの親、セブン‐イレブン・ジャパン 商品本部 マーチャンダイザーの篠崎さん。当時は、アイスカテゴリーのアシスタント職を経て、商品の企画・開発から販売までを担当するMD(マーチャンダイジング)の職に就いたばかりでした。
※以下MD

篠崎さん
会社の看板を背負ったプライベートブランド(PB)商品の開発ですから、あの頃の私にとっては一世一代の大仕事です。売上をつくらなくてはと、前のめりだったと思います。やるなら、セブン‐イレブンでしか食べられない商品を開発したい! そんな気持ちもありました。
模索していく中で出会ったのが、アイスメーカーの栄屋乳業様です。同社の主力商品であったチョコアイスバーは当時、セブン‐イレブンでの売上が低迷していました。

篠崎さん
私は、売れる商品を生み出したい。栄屋乳業様も、次の打ち手を探していらっしゃった。めぐり合わせですよね。新商品を一緒につくらせていただくにあたって私がお願いしたのは、食べた時に驚きを感じることでした。
そうして篠崎さんの元に自信作として届けられたのが、マンゴーのアイスバー。
「これ、まるでマンゴーを冷凍したような食感じゃないですか!」

篠崎さん
ひと口食べたとたんに、思わず声が漏れてしまいました。それくらい、本物の果物を食べているような口あたりに感動したんです。そして、この時の私の感想が、そのまま商品名になりました(笑)。

アイスバーなのに、やわらかくねっとりした濃厚な味わいは、まるで果実そのもの。セブン‐イレブンの社内でも「このアイスは新しい!」と評判になり、すぐに本格的な商品開発がスタートしたのでした。
しかし、最大の魅力である食感こそが、最大の壁だったのです。
売れなければ、次はない。1つの味にかけた夏
篠崎さんが感動したのは、テーブルサンプルと呼ばれる少量生産の試作品。大量量産を前提としてつくられたものではありませんでした。

篠崎さん
テーブルサンプルは本当においしかったんです。でも、マンゴーの食感を生み出す粘り気や果実の甘さが、なかなか安定しませんでした。何度も何度もやり直して、発売までには半年近くかかりましたね。

『まるでマンゴーを冷凍したような食感のアイスバー』が店頭に並んだのは、2013年7月。アイスが恋しくなる季節のことでした。これまでになかった食感と味わいが評判を呼び、あっという間に人気商品に。
手応えを感じた篠崎さんは、開発期間中に試作していた桃やバナナ、キウイといったほかの果物の展開も視野に入れていました。しかし、2013年に発売を許されたのはマンゴーのみ。

篠崎さん
マンゴーが売れなければ次の味は出せない。上司から、そう言われてしまいました。ほかの味を試してみたい気持ちや、1つの商品を売り続けなければいけないプレッシャー。すぐに素直に受け止めるのは難しかったのですが、上司が「しっかり育てていこう」と言ってくれるほどおいしいものを開発できた。これが励みになったと思います。
実は『まるでマンゴーを冷凍したような食感のアイスバー』は、まだセブンプレミアムの商品ではありませんでした。篠崎さんが開発には関わっていたものの、当初はナショナルブランドとしての取り扱いだったのです。
ですが、この時の篠崎さんの粘りが数字にも表れ、一瞬の話題性だけではなく安定して売れる商品へと成長。翌2014年には、「まるで白桃」をラインアップに加えてセブンプレミアムとして展開することになりました。
進化を続けて12年。「まるで」の歴史を受け継ぐ担当MDの想い
篠崎さんから担当が変わった後も、「まるでシリーズ」の進化は続いていきました。
バナナやメロン、みかんなどさまざまな季節の果物をラインアップに加えながら、2019年には『まるでマンゴーを冷凍したような食感のアイスバー』をリニューアル。
篠崎さんから始まった歴代MDのバトンを受け取り、2024年3月からシリーズを担当しているのが、セブン‐イレブン・ジャパン 商品本部 マーチャンダイザーの竹谷さんです。


竹谷さん
2019年のリニューアルでは、外側の層はさっぱりと、内側は熟した甘さの層をつくることで、本物のマンゴーにより近づきました。この二層構造はほかのフレーバーにも応用できるので、いろいろな果物の食感を実現できるようになりました。
2019年時点の「まるでシリーズ」のラインアップは全6種類。2022年は7種類、2023年には12種類にまで拡大。竹谷さんが担当になったタイミングでは、旬の果実のおいしさを今まで以上に届けられるシリーズへと成長していました。

竹谷さん
「まるでシリーズ」の担当になると聞いた時は、プレッシャー…でした(笑)。もともと九州地方でオペレーション・フィールド・カウンセラー(OFC:店舗経営相談員)として多くのお店を担当していた頃から、「まるでシリーズ」はすでに「セブンのフルーツアイス」として広く認知されていましたし、日々の売上も見ていたので…。
そんな竹谷さんが、商品開発において大切にしているのは“お客様が求める商品”を考え抜くこと。

竹谷さん
「まるでシリーズ」はいろいろなお客様に手に取っていただいています。たとえば『セブンプレミアム まるで紅はるか』では、女性を中心にご好評いただきました。男性が好きなフレーバーもあるので、幅広い方に受け入れていただけることを意識するようにしていますね。
竹谷さんの言葉通り、より多くのお客様へのアプローチとして生まれたのが『銀座千疋屋まるでクラウンメロン』です。
高級路線からサステナブルまで。続く「まるでシリーズ」の挑戦

竹谷さん
クラウンメロンは2022年からあったフレーバーなのですが、2024年の千疋屋様とのコラボレーションにあたって、“高級果物店が取り扱うような”味を目指しました。静岡県産クラウンメロンのストレート果汁を使用し、とことんおいしさを追求した商品です。原材料だけでなく製法も見直し、メロンらしさを引き出すことにこだわりました。
努力が実り、『銀座千疋屋まるでクラウンメロン』はヒット。さらなるおいしさを求めて、2025年の今年※はリニューアル発売されました。しかし、リニューアルとひと口に言っても、簡単なことではありません。
※売り切れ次第、販売終了

竹谷さん
試作してみても、「前の味のほうが良かった」ってなることが多かったんです。それでも、ひと口目の果汁感を高めるために、果汁と香料のバランスを改良しました。味を比較しながらの見直しは10回以上行っています。
もう一つ、竹谷さんの頭を悩ませたのが、原材料の高騰でした。価格をそのまま反映すると、約10%もの値上げにつながってしまう…。

竹谷さん
メーカー様に原材料の調達から見直していただいて、なんとか今の価格帯に収まりました。クラウンメロンのリッチな味わいを守りながら、前よりもおいしくなっていると思います。

まるでシリーズの年表(画面中央)を見て、「今はこんなにあるんだね!」驚く篠崎さん。
こうした高価格帯商品へのチャレンジとは別に、2022年から「まるでシリーズ」が取り組んでいるのが、これまで規格外品として廃棄されてきた果物の活用です。

竹谷さん
皮に傷がついていたり、形が少し変わっていたりするだけで、味はスーパーやコンビニで売られているものと変わらずにおいしいものなんです。それはもったいないですよね。『まるで完熟バナナ』を中心に、ほかのフレーバーでも“もったいない原料”を活用しています。
果実それぞれのおいしさを追求するというコンセプトのもと、広がり続ける「まるでシリーズ」。最後に、初代MDの篠崎さんと、現在のMDである竹谷さんの想いをお話しいただきました。
想いはつながり、次の“まるで”へ


竹谷さん
今年から、年間を通してマンゴーを販売できるようになりました。これまで安定的にお届けするのは難しかったのですが、「いつでもセブン‐イレブンに行けば、あのマンゴーがある」と思っていただきたくて。

人気のある果物を安定して調達するのは難しいんですよ。私の時代ではできなかったことです。長く残る商品をつくるのは簡単ではありませんが、ここまで育ってくれて本当にうれしいです。商品開発担当者として、晴れ晴れしい気持ちですね。

竹谷さん
私もいつか、やって良かったと振り返れるように白桃を第2のマンゴーに育てていきたいです。
これからも、まるで○○みたい!の感動をアイスに込めて。「まるでシリーズ」の物語はまだまだ続きます。
※一部店舗により取り扱いのない場合がございます。

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