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日本中に香る1杯を!コーヒー文化を変えた『セブンカフェ』が生まれるまで

いつでもどこでも買える、コンビニのコーヒー。『セブンカフェ』は、コンビニコーヒーの当たり前を変えてきました。
2013年の販売開始以来、挽きたて・淹れたての1杯として多くの人に親しまれ、販売累計90億杯を突破。産地の支援を行いながら、おいしい1杯を届け続けています。

しかし、その誕生までには紆余曲折がありました。
長年続いた困難の連続、テスト販売での不振、何度も繰り返されたマシン・味・品質の改良。

“コンビニコーヒー”というジャンルは、幾多もの嵐を越えてようやく生まれたのです。
私たちが何気なく手に取る1杯の向こうにあった、『セブンカフェ』のアメノチハレに迫ります。

数々の挑戦が、挽きたて・淹れたての『セブンカフェ』につながる

「正直、『いつまで淹れたてコーヒーの開発をやり続けるんだろうね?』という空気が社内にはありましたね…。何せ、失敗続きでしたから」

そう語るのは、25年3月まで『セブンカフェ』を管轄していた商品本部FF・冷凍食品部シニアマーチャンダイザー米田(まいだ)さん※。
※現  7-Eleven International LLC Senior Director

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セブン‐イレブンが初めて店内でコーヒーの提供に挑戦したのは、創業間もない1975年。あらかじめ抽出したコーヒーをポットで保温し、注文のたびに注ぐ「デキャンタ方式」と呼ばれるものでした。

米田さん

米田さん

コーヒーは、生豆を焙煎して挽いた後、熱湯を注ぎ抽出するんですが、挽いてから時間が経つと一気に酸化して、香りが飛んでしまうんですよね。当時の話を聞くと、コーヒーの良い香りではなく、むしろ焦げたような匂いが店内には残ってしまっていたそうです。

1990年代には、粉にした豆をカートリッジに詰め、1杯ずつ抽出する方式で再挑戦します。しかし、当時の密封技術では豆の風味が保てず、思うような味にはなりませんでした。

さらに2000年代に入ると、エスプレッソ方式(コーヒー豆をプレスして抽出する方式)を採用した「バリスターズカフェ」を展開。ある程度の支持は得られたものの、思うような成果には届きませんでした。

米田さん

米田さん

エスプレッソは苦みが強く濃厚なのでカフェラテには向いているんです。ただ、プレスの過程で香りが逃げてしまうので、挽きたてのドリップコーヒーにはおよびません。もともと日本は喫茶店文化で、後味のすっきりしたブラックが好まれてきたこともあり、提供方法とお客様の嗜好がうまく噛み合っていなかったんですね。

それでも、“セブン‐イレブンでおいしいコーヒーを”という想いは絶えることなく、次の世代へと引き継がれていきました。

挽きたて・淹れたてのおいしさを今度こそ。あの人気商品がヒントに

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転機が訪れたのは2010年頃のことでした。外資の大手コーヒーチェーン店が拡大し、ファストフードチェーン店では安価のコーヒーが人気を集めていたのです。

コンビニエンスストアでも、おいしいコーヒーを値ごろ感のある価格で出せれば、必ず受け入れられるはずだ。

これまで積み重ねてきた、幾つもの試みと挫折。それを知りながらも、“今度こそ成功させる”という開発チームの信念が『セブンカフェ』への道のりを静かに切り拓いていきます。

米田さん

米田さん

開発プロジェクトをスタートさせるにあたって、チームは“日本人の味覚に合ったコーヒーとは?”という原点に立ち返ることにしました。過去の失敗を振り返ると、問題は味にあったと改めて認識した訳ですね。そこで我々が注目したのが、実はおでんなんです。

『セブンカフェ』が生まれる前、開発チームがメインに担当していたのはカウンターファストフード(以下、FF)商材。そして、その花形はおでんだったのです。コーヒーと、おでん。交わることのない二つの商材が出会ったのは、運命的なことだったのかもしれません。

米田さん

米田さん

だしがおいしいから、おでんは広く愛されています。では、なぜ日本のおでんのだしはおいしいのか。その答えは“軟水”でした。日本特有の軟水だからこそ、削り立てのかつお節から風味豊かなだしが引き出せる。これをコーヒーに応用できるのではないかと考えたんです。

日本人の好むコーヒーを淹れるための“水”は決まりましたが、まだ一手足りていませんでした。デキャンタやカートリッジ形式では成しえなかった、淹れたてのコーヒーの風味の実現です。

その難問をクリアするためにチームが導き出したのは、1杯ずつ豆を挽いて淹れるというもの。

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米田さん

米田さん

そんな贅沢な淹れ方、できるの?って思いますよね。ですが我々は、理想とするコーヒーから逆算してアイデアを練っていったんです。

1杯ずつ豆を挽くにはどんな仕組みが必要なのか。1杯ずつ淹れるための最適なお湯は何度なのか。全国どこでも同じ味を生み出すために何が必要なのか。
さまざまな議論やアイデアが飛び交う中、開発チームの支えとなったのが外部のパートナー企業でした。

理想を現実にするために。挑戦をともにしたパートナーたち

最初に心強いパートナーとなったのが、原料のコーヒー豆を調達する総合商社の三井物産様。焙煎の工程では、味の素ゼネラルフーヅ(現・味の素AGF)様の力を借りることに。

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コーヒーの生豆。焙煎後に豊かな香りと風味を引き出します。

米田さん

米田さん

特に味の素AGF様のコーヒー豆へのこだわりはすごくて、コーヒー豆の表面についている薄皮(渋皮)を磨いて取り除いてから、プロの焙煎士のノウハウを用いて焙煎します。だから渋みのない、その豆本来の風味が出せる。そんなおいしさを、コンビニエンスストアでお客様に届けたいと思っていただけたからこそ、ご一緒できたんです。

おいしい豆を調達し、焙煎する体制は整いました。しかし、埋めなければならない大きなピースが一つ。理想のコーヒーを淹れるためのコーヒーマシンです。

米田さん

米田さん

淹れたばかりのコーヒーを、コンビニエンスストアでお出しする。これまでにないアイデアを形にするには、マシンも一から開発する必要がありました。加盟店様の立場で考えると、操作性のシンプルさやメンテナンスのしやすさも重要な開発ポイントでした。

パートナーとなるメーカー様を求めて探し回る中で、開発チームが出会ったのが、高速道路のパーキングエリアなどに設置してある、カップ式飲料自動販売機を製造していた、富士電機様です。

ボタンを押すとカップが落ちてきて、コーヒーが注がれて、温かいコーヒーがすぐ飲める。普段、当たり前のように見ていたその自動販売機の仕組みは驚くほどこだわり抜いたものでした。

米田さん

米田さん

当時の富士電機様のご担当者は面食らったそうです。コーヒーの自動販売機のサイズから考えると、コンビニエンスストアで求められるカウンターに設置するマシンのサイズは、大型のバスを軽自動車にしてさらに小型化するようなものなんですから(笑)。

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それでも、最終的にはコンビニエンスストアのコーヒーという可能性を信じて、富士電機様もチームに加わっていただきました。それは、まさに『セブンカフェ』におけるチームマーチャンダイジング(以下、チームMD)のスタートとも言えるものでした。

こうして、2011年。最初の『セブンカフェ』専用マシンが誕生します。
ですが、本当の勝負はここから。お客様にコーヒーを受け入れてもらえてこそ、晴れ間にたどり着けるのです。

現場の課題に直面。加盟店様と一緒に育てた『セブンカフェ』

ところが、満を持しての都内でのテスト販売は、期待とは裏腹の結果に。目標の「1店舗あたり1日50杯」に届かなかったのです。マシンの細かい改良も続きました。

米田さん

米田さん

豆を挽くグラインダーの削り幅。削った後の滓(かす)を入れるバケツの形状まで…実際に店舗で動かしてみないとわからないことだらけでした。

現場オペレーションにも多くの課題がありました。メンテナンスなど、富士電機様がこれまで専用スタッフによって運用してきたコーヒーマシンとは異なり、セブン‐イレブン店舗の従業員さんがマシンのメンテナンスをしなければなりません。ところが、初代の『セブンカフェ』専用マシンはフィルターの交換すら難しいものだったのです。

開発チームはマシンの改良に、さらに1年以上を費やしました。

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もう一つ大きかったのが、お客様の認知。2011年当時、コンビニエンスストアで挽きたて・淹れたてのコーヒーが飲めるとは、誰も思っていなかったのです。

そんな苦境をともに戦ってくれたのは、『セブンカフェ』の味を信じてくれたオーナー様方でした。

米田さん

米田さん

テスト販売では、コーヒーの品質を確信した担当者が旗振り役として、鹿児島エリアのオーナーさんと一丸となって販売に奔走してくれました。その結果、1店舗あたり1日100杯という販売数に到達したんです。そこから他のエリアにも火がついていきましたね。

チームMDと、加盟店様の力。そして、歴代担当者の情熱。これらが一つの形となり、『セブンカフェ』は2013年1月、ついに正式リリースし、全国拡大に至りました。最初の挑戦から、実に38年の歳月が流れていました。

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お客様ニーズを追い求め…これからも続く『セブンカフェ』の挑戦

多くの雨の向こうに、晴れ間を迎えた『セブンカフェ』。今や累計90億杯に達するほどの看板商品へと成長しました。ですが、挑戦の歴史は終わっていません。

米田さん

米田さん

実は、『セブンカフェ』とはコーヒーだけを指すものではないんです。『セブンカフェ』はお客様に上質な時間を提供するブランドこれがブランドコンセプトなんですね。このブランドの傘を大きくすることが、今の『セブンカフェ』の挑戦です。

手軽に野菜や果物を楽しめる『セブンカフェ スムージー』、今後展開を拡大予定で淹れたての本格的な紅茶が楽しめる『セブンカフェ ティー』。コーヒーの時間をより楽しめる焼き菓子など多様なラインアップを揃え、お客様に「上質な時間」を提供し続けています。

米田さん

米田さん

今、ようやく『セブンカフェ』は当初のコンセプトに近い形になりつつあります。だから、同じところにとどまっていては、だめなんですよね。お客様が今求めているのはなんだろう? と丹念に紐解いていく。すると、やがて晴れ間が見えてくるはずです。

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『セブンカフェ』の挑戦は、これからも続いていきます。

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