
片手で味わう罪悪感ゼロの甘さ。豆腐スイーツバー誕生秘話
無性に甘いものが食べたい…たとえ、それが夜中だったとしても。
そんな気持ちになって、食べようかやめようか迷ったことがあるかもしれません。
幸福感と隣り合わせの“罪悪感”をなくしてくれるのが、セブンプレミアムの豆腐スイーツバーです。豆腐らしさを活かしながらも、しっかりと甘い。スイーツ好きには夢のようなこの商品の開発にもまた、いくつもの雨が降っていました。
今回は、豆腐スイーツバーの担当者たちのアメノチハレをお届けします。
「夜中に甘いものは食べたくない!」開発のきっかけは娘の一言
「豆腐をより多くの方に食べてもらいたい。豆腐スイーツバーの元となった豆腐バーは、そんな想いから始まったんです」
そう語ったのは、セブン&アイ・ホールディングス セブンプレミアム商品開発戦略部の芳賀さん。豆腐市場を広げるために、芳賀さんたち開発チームが注目したのは“豆腐の売り方を変えること”でした。


芳賀さん
白くて四角い豆腐という従来の形だけではなく、片手で食べられて、いろいろな味も楽しめるようにする。そうすれば、今よりもっと多くの方に豆腐を楽しんでもらえるはずだと、考えたんです。
そうして発売された豆腐バーは、食べ応えのある食感・豆腐のおいしさが詰まった味わい・大豆由来のたんぱく質を片手で摂れる手軽さで、人気商品へと成長しました。

芳賀さん
ただ、時間が経つにつれて売上が頭打ちになってしまいました。次の打ち手をどうするか、日々悩んでいましたね…。
そんな時、芳賀さんと議論を重ねたのが、同じ豆腐バー開発チームにいたセブン-イレブン・ジャパン 商品本部 マーチャンダイザーの川上さんです。


川上さん
そもそも、豆腐バーが売れている理由の一つは“ワンハンド”の手軽さです。今はスマートフォンをはじめとして、片手で何かをすることが定着していますよね。

芳賀さん
豆腐を使ったスイーツは、豆腐プリンなどすでに世の中に存在していました。でも、ワンハンドで食べられるものはまだない。それならまったく新しい、健康志向の豆腐スイーツをお届けできるのでは? と考えました。

川上さん
そこで、こういうシーンを想像してみたんです。夜、会社から帰宅したお父さんが、娘へのおみやげにスイーツを買っていった。ところが、「夜中に甘いものは食べたくない」と喜んでもらえなかった、という…。

芳賀さん
それって、川上家のエピソードですよね(笑)?


川上さん
…はい(苦笑)。とにかく、豆腐のスイーツなら、夜でも罪悪感なく食べられるのかもしれない。これがヒントになったわけです。
こうして、健康的でありながら幸福感も同時に満たせる豆腐スイーツバーの開発がスタートしたのでした。
大豆の風味とマッチした「2種類のフレーバー」
香料を使用すればモンブランやチョコミントなど、豆腐をベースとしていても幅広い味を生み出すことができます。しかし、開発チームが目指したのは、ただのスイーツづくりではありません。


芳賀さん
目指したのは、“豆腐のおいしさを活かした”スイーツでした。豆腐バーのスタート地点がもっと豆腐を楽しんでいただくことでしたから、チームとしてこの軸はしっかりと持っておきたかったんです。

川上さん
何度も試作を重ね、あらゆるフレーバーを試した結果、大豆の香気成分と相性がよかったのがカカオと芋類。特にカカオの相性がよかった。おかげで、素材のおいしさと甘さを両立させることができました。
味わいと同様にこだわったのが、スイーツならではのなめらかな食感。豆腐バーでは食べ応えのある木綿豆腐のような生地を用いていましたが、豆腐スイーツバーではなめらかな舌ざわりの絹豆腐のような生地を採用。そうして最終的に完成したのが、「ガトーショコラ味」「スイートポテト味」の2種類の豆腐スイーツバーでした。
チーム内では自信のある出来栄え。しかし、社内での試食会の評判は期待通りとはいきませんでした。
試食会での厳しい評価と、テスト販売での思わぬ結果

芳賀さん
試食会の第一声は、「こんなの誰が食べるの?」でした。

試食会を行ったセブンプレミアムの「水物・練り物・チルド麺部会」は、豆腐をはじめ納豆、おでん、うどんなど、昔からの定番食材を扱う部会。そのせいか、見た目も味も新しい豆腐スイーツバーは、ほとんど受け入れてもらえなかったのです。

芳賀さん
今まで世に存在しなかったものですから、いろいろな反応があるのはもちろん覚悟していました。ただ、正直かなりこたえましたね(苦笑)
とはいえ、試食会に参加した全員の評価が低かったわけではありませんでした。中には、好意的な評価も。そこで開発チームは、最終的な判断をお客様に委ねるために、テスト販売を実施しました。
テスト販売を行った店舗では、水物(豆腐、こんにゃくなど)のカテゴリーの数字が上昇。豆腐スイーツバーが数字を押し上げたのです。テスト販売のエリアを徐々に広げていっても、その勢いは衰えませんでした。

川上さん
驚いたのは、若い女性のお客様の数でした。娘の一言がヒントにはなったものの、豆腐バーの新しい選択肢としてご提供できればいいと考えていたんです。それがいざフタを開けてみたら、まったく違う結果で。うれしい誤算でした。
テスト販売の好調だけではなく、豆腐バーとは異なるお客様層に届いたという強み。試食会での評価を覆し、豆腐スイーツバーは2024年3月に正式販売を開始しました。
予想外の人気に供給が追いつかない!
販売エリアを限定しつつも、徐々に全国展開していく計画を立てていた豆腐スイーツバー。ところが、販売する先々で予想を上回る売れ行きが続き、生産が追いつかない事態となってしまいました。
「想像以上の反響に、うれしい悲鳴を上げていました」と川上さんは当時を振り返ります。ですが、足を止める訳にはいきませんでした。
ガトーショコラ味に欠かせない原材料のココアパウダーも、世の中のカカオ不足の煽りを受けて不足し、供給が間に合っていなかったのです。川上さんは供給体制の構築に奔走することに。

川上さん
あらゆるツテを頼って、複数のお取引先からココアパウダーを仕入れました。でも、つくってみたら同じ味にならない。ココアと大豆との相性が重要だったんですね。どんなココアパウダーでも使えるわけではないので、調達には今でも頭を悩ませています。
豆腐スイーツバーが全国展開を完了させたのは、発売から9カ月が経過してからでした。
豆腐スイーツバーの、新しい選択肢

商品開発から発売、そして発売後の供給体制の構築。いくつもの雨を乗り越え、豆腐スイーツバーは、新感覚の健康スイーツへと成長しました。しかし、開発チームは次なる挑戦に取り組んでいます。豆腐×スイーツという組み合わせに、“ラテ”の要素を加えたストロベリーソイラテ味の開発です。

豆腐スイーツバー ストロベリーソイラテ味
※地域・店舗により規格や価格・発売日が異なる場合がございます
※一部店舗により取り扱いのない場合がございます

川上さん
水分調整にだいぶ苦労したのですが、イチゴのみずみずしさとつぶつぶ感を生み出せたと思っています。

芳賀さん
試食したスタッフからの評判もいいので、ぜひ食べてみてほしいですね。
ストロベリーソイラテというと、淡いピンク色でかわいらしい印象があって、お二人の日常にはあまり縁がなさそうですよね(失礼!)。現状の売れ行きに満足することなく、前進を続ける芳賀さんと川上さんには、共通して意識していることがあります。
それは、あらゆる分野に興味を持つこと。街中で流行っているものや、ありとあらゆる広告やパッケージ。そして、家族からの一言。見聞きするものすべてが、これまでにない商品を生み出す土壌になっています。

芳賀さん
うれしかったのは、発売後に多くのお客様にご支持いただいたことですね。家族や友人など身近な人からの「おいしかった!」という言葉も励みになりました。こういう商品の開発に携われたのが何よりですね。

川上さん
“豆腐の食べ方”について市場に新しい選択肢を提供できた、という手応えを感じています。この先も期待にどうやって応え続け、安定的にご提供していくか。その悩みは続くと思いますが、より多くの方に楽しんでいただけるように挑戦していきたいです。
さらなる晴れ間を目指して。豆腐スイーツバーはこれからも進化を続けていきます。