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のんの「私のめざめ」。 緊張や恐怖を携えながら、自信を持って挑戦するための言葉

人それぞれにある「めざめ」の瞬間。その無限大の可能性を応援する「asupresso」がお送りするコラムシリーズ「私のめざめ」では、毎回スペシャルなゲストに「めざめ」にまつわる思い出や考えを自由に書いて寄せてもらいます。今回筆を執ってくださったのは、俳優そしてアーティストとして活躍するのんさんです。

のん(俳優・アーティスト)
音楽、映画製作、アートなど幅広いジャンルで活動。2016年公開の劇場アニメ「この世界の片隅に」主人公すずの声を演じ、第38回ヨコハマ映画祭審査員特別賞を受賞。2022年2月に自身が脚本、監督、主演の映画作品「Ribbon」公開(第24回上海国際映画祭GALA部門特別招待作品)。2022年9月、主演映画「さかなのこ」で、第46回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。2024年12月、主演映画「私にふさわしいホテル」公開。DMMTVでの実写ドラマ「幸せカナコの殺し屋生活」が好評配信中。同年4月にはNetflix映画「新幹線大爆破」が配信予定。音楽活動では、最新配信シングル「春よ受けて立つ」をリリース。2024年、第16回伊丹十三賞を受賞。

念願のアクション。でもいつも以上に不安もあった

こんにちは、のんです。今回は私の「めざめ」を書かせていただくということで、ちょうど最近配信されたDMM TVのオリジナルドラマ「幸せカナコの殺し屋生活」でのことをお話したいと思います。

この作品は、私にとって初めてのアクションへの挑戦でした。アクションにはずっと興味があって、マーベルやDCコミックの実写化作品、黒澤明監督の作品とか国内外問わずアクションものやヒーローが活躍する作品は大好き。「いつか自分もチャレンジしたい!」と憧れていたんです。

カナコ役のお話をいただいたときは、英勉(はなぶさ つとむ)監督から「アクションシーンを膨らませていこうと思っている」とお聞きして「これはチャンスだ」と思いました。ですが、どの作品でも観てくれる人に届くまでずっと不安が付いて回ります。「どんな仕上がりになるだろう」「自分は役にハマれているか」「描いている世界観を表現できているか」って。とくに今回は初挑戦のアクションが加わるし、今まで殺し屋の作品というのはやったことがない。

「幸せカナコの殺し屋生活」は、殺し屋を題材にしたシニカルコメディ。不謹慎にならずにコメディを表現できるか、それも難しいところでした。私自身、ガイ・リッチー監督の映画「スナッチ」のような辛口のコメディは好きだけどカナコのようにポップな世界観で表現するのは難しい……そういった意味でも“挑戦”色の強い作品だったと思います。

相手と息を合わせた“その先”が見えた。

アクション練習では、体を柔らかくするストレッチから始まり、パンチやキックの動きを基礎から徹底的に学びました。「どうしたら“魅せる蹴り”ができるだろう?」と考えて、蹴りの打点を高くするために股関節を柔らかくしたり、美しい動きのために体幹を鍛えたり、とブラッシュアップしていきます。

実は私は運動するのは好きではなくて、普段は体を動かすことに前向きになれないタイプです。でもアクションで「こんなかっこいい動きをやりたい」とか「美しいラインを描きたい」という“表現したいビジョン”があるので、そこに向けての運動や筋トレでの体作りは苦じゃなかったんです。……これがただ体作りのためにジムに通うとかだったら、ここまでできなかったかも(笑)。

——思い返すと、もう本当に大変でしたが、楽しかった!撮影中にモニターチェックをしているときも、日を追うごとにどんどんかっこいいと思える瞬間が増えていって、自分の成長がうれしかったです。今は、もっと鋭い動きができるようになりたい!とアクション欲がどんどん出てきている状態。アクションは今後も挑戦したいです。

それと、アクションを経験したことで自分の表現の幅も広がったようにも思います。演技って、相手と息を合わせることが大切で、セリフや感情の流れ……その歯車がかみ合ったときに気持ちよさを感じるんです。それがアクションだと、息が合った“その先”がありました。体の動きで息を合わせて、リズム感をつくるんです。「息を合わせる」ということが、アクションだと「視覚的に形になる」という気づきでした。形式美を表現することが私の課題だったのですが、今回のアクションの経験で突破口を見つけた気持ちです。これが私のめざめです。

新しい挑戦に怖気付くなら「ハードルは低く」

でも、やっぱりアクションは難しい。アクションで息を合わせるというハードルを越えて、日常生活のいろんなことがへっちゃらになった気がします。

私は一対一で初対面の人と話すのがすごく苦手で……自分の考えを伝えるとかインタビューに応えるとかは平気なんですけど、シンプルに他愛のない世間話をするのに緊張するんです。でも、アクションでの緊張感を乗り越えた自分なら(まだ初対面の人との雑談は苦手だけど)できる!って思えるから不思議。

新しいことに挑戦するって、不安や緊張が付きものですよね。私も、毎日大小いろんな挑戦があります。自分のメッセージを込めた歌や作品を発表したり、自分でプロジェクトを立ち上げたり……本当に大変だけど、その挑戦の度に自分のメッセージが届いたり誰かの希望になったりするときがある。爽快で、大好きな瞬間です。

もし、今何かに挑戦しようと武者震いしている人がいたら、「自分の中で一番低いハードルから始めてみませんか?」と伝えたい。1つハードルを乗り越えたら「これも頑張れるかも」って、目の前がどんどん開けていくはず。同時に自分のことももっと見えるようになって、それがきっと“自信”になると思うんです。自信を保ったまま挑戦する、って本当に難しいことだから。「怖いし緊張するけど、命はかかってない」くらいに肩の力を抜くと、挑戦する勇気が出る気がするのです。

<作品紹介>
若林稔弥先生の大人気4コマ漫画が待望の実写化。ブラック企業から超ホワイト待遇の殺し屋に転職したカナコが、日常に転がっている社会の悪を成敗します!
「みんなが抱える不満や苦悩をカナコがスカッと吹き飛ばしてくれる、『エナジードリンク系アクションコメディ』です。ぜひご覧ください!」

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