

「スローショッピング」で広がる高齢者の買物支援! イトーヨーカドー国領店レポート
「買物に行く」その当たり前を、すべての人に。年齢や身体の変化などにより、外出や買物が難しくなった方々に、安心して日常の楽しみを取り戻してもらう――それが「スローショッピング」です。2025年6月、イトーヨーカドー国領店で開催された「おたのしみスローショッピング」では、地域やボランティアと協力しながら、4名の高齢者がゆったりと時間をかけてお買物を楽しんでいました。今回は、その取り組みの現場から、参加者の声と地域・店舗に込められた想いをお届けします。
「おたのしみスローショッピング」とは?

参加者に寄り添うボランティアスタッフ
イトーヨーカドー国領店が実施する「おたのしみスローショッピング」は、「買物をもっと安心・快適に楽しんでいただく」ことを目的に、周辺地域に暮らす高齢者をお迎えして、買物のサポートから休憩スペースでの見守りまで、ボランティアスタッフと協力して行います。
イトーヨーカドーでは、2024年にイトーヨーカドー桂台店(神奈川県横浜市)からこの試みを開始。国領店では、狛江市社会福祉協議会(以下、社協)、ボランティアと連携し、2025年5月に初開催。6月には2回目を実施し、今後は夏季を除く月1回のペースで、2026年3月まで定期開催を予定しています。

狛江市社会福祉協議会のスタッフと参加者、店舗スタッフ
笑顔でゆっくりショッピング
参加対象は、歩行に不安がある方や軽度の認知症状がある方、また、家族による支援が難しいといった理由から、普段一人での買物が困難な高齢者の方々。今回、国領店での取り組みに参加したのは、地域で暮らす80〜90代の女性4名。いずれも、日常の買物に不便を感じている方々でした。
当日は、送迎を社協が担当し、社協の呼びかけに応じたボランティアが一人ひとりに付き添い、買物をサポートしました。参加者たちは、広々とした店内をゆっくりと見て回りながら、食料品や日用品、衣類などを手に取って楽しんでいました。

一人ひとりのペースに合わせて歩き、気になる商品を見つけるたびに立ち止まって、ボランティアから説明を聞く姿も見られました。時には店舗スタッフに声をかけ、目的の品を一緒に探す場面も。広くゆとりのある通路やエレベーターといった国領店の売場設計も、安心して買物を楽しめる要素となっていました。
買物を終えた後は、併設のフードコートで休憩タイム。冷たいドリンクを片手に一息つきながら、ひ孫の話や施設でのイベントなど、話題が尽きることはありません。
会計と袋詰めはボランティアの手を借りながらスムーズに。最後は社協のスタッフ、ボランティア、そして店舗スタッフが、笑顔の参加者たちを見送り、2時間のおたのしみスローショッピングはあっという間に終了しました。
「次回の予定まで聞いてしまいました」 参加者の声

参加者の一人は、広い店舗での移動は少し大変だったものの、お店のスタッフに聞きながら無事に買物を終えたと振り返り「すごく良い体験でした」とコメント。「次もぜひ参加したいと思って、次回の予定まで聞いてしまいました」と笑顔で話してくれました。

また、普段は息子さんと買物へ行くことが多いという別の参加者は、ボランティアとおしゃべりしながらショッピングできたことがうれしかったと言います。「女性同士だからこそ話せることもあって、お洋服選びがとても楽しかったです。しかも、お買い得で素敵な服が見つかりました!」と、大満足の様子でした。

3年前に現在の場所へ引っ越してきた参加者は、「まだあまりお店を知らない」と話す中で、ボランティアや店舗スタッフのサポートを受けながら食料品や衣類と幅広い商品を購入。「ボランティアさんが選び方や買い忘れがないかをしっかりアドバイスしてくれて助かりました」と感謝していました。
あえて特別扱いはしない 誰にとってもやさしいお店づくり
スローショッピングに取り組むにあたり、社協のスタッフと国領店の笹目支配人が共通して語っていたのは、「参加者を特別扱いしない」という姿勢です。

参加者を接客するイトーヨーカドー国領店の笹目支配人
イトーヨーカドー国領店は、高齢者を含むすべてのお客様が、自然にショッピングできるお店を目指しています。誰にとっても見やすく手に取りやすいよう、目線の高さに配慮した商品配置を心がけているほか、通路はきれいに広く保てるよう工夫していると言います。
「スローショッピングのために来店されたお客様のみならず、すべてのお客様に対して誠実な対応を取るように普段から意識しています」と話すのは、同店の笹目支配人。「お客様だけでなく、スタッフにとっても働きやすい売場と職場づくりを心がけています。それがサステナビリティにつながると考えています」と、お店づくりへの思いを語りました。
笹目支配人は日頃から手が空けば店内を見て回り、お客様やスタッフへの声かけを自ら積極的に行っているそうです。今回のスローショッピングでも、参加者と気さくに言葉を交わしながら販売員と連携し、率先してショッピングを手伝う姿が印象的でした。
いつまでもお買物を楽しんでいただけるように

イトーヨーカドー国領店
「自分で選ぶ」「自分で歩く」――その当たり前が難しくなった時、誰かの手を借りながらも“自分らしい買物体験”を実現する。スローショッピングは、そんな思いが込められた買物支援の取り組みです。
イトーヨーカ堂サステナビリティ推進部の井上さんは、スローショッピングの施策について「2026年度も継続予定」と表明。参加者やボランティアからのフィードバックを活かしながら、「より快適で楽しい時間を過ごしていただけるよう、創意工夫してまいります」と話します。
狛江市での開催は、対象地域を移しながら、2025年度内に全9回(うち2回は実施済み)を予定しています。「地域の高齢者の方がこの取り組みに参加することで少しでも元気になり、生きる活力につながれば」と語り、「買物は生活に不可欠なものですから、いつまでもお買物を楽しんでいただけるよう、健康寿命の延伸に貢献できればと考えております」と続けました。
お目当ての商品がある売場までご案内する。ラベルの小さな文字を読み上げる。つえを落としてしまった方に拾って渡す。お客様の希望に添った商品を提案する――。
これらは、イベント中に実際にボランティアや店舗スタッフが行った行動の数々ですが、いずれも「相手が高齢だから」ではなく、「今その方が困っていたから」こそ生まれた、自然なサポートでした。
イトーヨーカ堂ではこれからも、地域の皆様に喜ばれるお店づくりに取り組み続けていきます。